Yan Lauria による投稿

統一するか否か

自然界では徹底的に不規則にする必要があるが、人工物の場合、仮想空間では何も意識しないと規則正しい建物になり過ぎてしまう。そのことは頭の片隅に置いておくことにして・・・。

バーチャル博物館と現実世界の博物館との圧倒的な違いは、バーチャル科学館ではフィールドでも深海でも宇宙空間でも、なんでも博物館になる。建物なんて、かえって邪魔である。

とはいえ、そんなシムでも、表示はいる。どんなガラクタやゴミでも、タイトルと製作者名と製作年を表示すればアートになるとは前に書いたとおりです。まったく決まった形式のないバーチャル博物館でもデサインを統一した方がいいものが4つある。

順路の矢印、展示物の名称表示、解説ノートを得るためのインフォ・ポスト、それからテレポータである。

それらのデザインやテクスを統一するために、テーマカラーやロゴマークを決める。アビスの場合は深海から浅海へのグラデーションを場所を表示する看板にし、インフォ・ポストはミニ地球にしている。

テレポータについては上空の展示への誘導が大変難しく、いろいろ工夫した結果、TP先の見栄えの良いスナップショット(512×256)を16:9のパネルに貼っている。こうすれば、訪問者はどうしても行ってみたくなる気がする。これがベストな方法ではないかもしれないけど。

 

仮想空間での建築デザイン

(その1)でしのばーさんからコメントいただいた内容と重複するかも。

仮想空間に現実世界の建物を再現することは、もちろん仮想空間の楽しみの一つではあるけど、そうして再現した建物の内部は利用に適さないことが多い。たとえ実物の1.5倍又はそれ以上の大きさに作ろうが・・・。

それはカメラ位置の問題もあれば、結局、1920x1080のモニタ越しにしか世界を見渡せないことも関係あるだろう。基本的に「下を向いて歩こう」の世界なのである。すると建築デザインも現実世界と変わって当然といえる。

逆に考えると、現実世界の建物は、防犯のためにもプライバシーのためにも開放的に作ることはできないし、大きすぎる窓を作ってもほとんどカーテンを締めたままでいるし、夏の強烈な日差しや冬の寒さからの断熱が必要だし、家具や収納スペースも設けなければいけない。つまり住み心地第一で作られているわけでは決してない。ところが仮想空間ではそういう問題に配慮する必要がまったくなくなる。

私は開放型の建物にするのが一番いいと思うが、そこは人間、元からの習性は容易に変えられない。人間にはちょうどいい心地よい広さというものがある。その結果、床をある大きさに区切る必要がある。区切るのに何も壁を設けなくて良い。段差をつければ、それでそれぞれの区画が独立した意味を持つ。(スナップショット参照)

建築デザインのセンスなど持ち合わせていない人間にとって、好都合なのものに「モダニズム建築」というものがある。好都合な点が2つあって、一つは、仮想空間で便利な矩形を多用していること。もうひとつは機能主義であること。空間の区切り方や配置をすべて機能第一主義で考える。

それぞれの区画に立って周りの視界がどのように見えるか、それが展示物にとってどうなのかをとことん、現場合わせで作っていくと、いつの間にか「機能美」に感じられるようになればシメたものである。

(つづく)

 

キュレーション/キュレーティングとは?

キュレーターというのはいろんな意味に使う。図書館の司書や博物館の学芸員みたいに管理的業務のイメージがあるかもしれない。

私はキュレーション、キュレエーティングというのは、「いくつものコンテンツをあるコンテクスト(文脈)のもとで3次元空間に配置することによって、新しい価値を生み出すこと」だと勝手に定義している。

図書館では本をある工夫された分類にもとづいて書架に配置し、知識を探索しやすくしているし、美術館や博物館などでは、個々の作品、展示品をどう配列するかで、美術館・博物館の値打ちが変わってくる。

美術館の場合、優れた作品のお陰で美術館の値打ちが上がるのではなく、優れたキュレーターによって配置されることで作品の値打ちが上がるのだとも言うそうだ。

コンテクスト(文脈)で分かりやすいのは歴史順に並べることであるが、テーマ別に並べたり、画風別に並べたり、そこは最初から計算できる場合もあれば、偶然によって思わぬ表現が生まれるかもしれない。予想・期待に応えることと、予想・期待を裏切ることを半々にするのが、芸術の黄金率だと私は思っている。

(自然をキュレーティングする)

前回はテクスチャの話が尻切れトンボになったが、ここでまたテクスの話が出てくる。

自然の地形と植生を仮想空間に表現する場合、

・まずは地形を適当に編集する。

・なだらかに見える地形でもその下には岩盤が褶曲し、切れ切れになって埋まっているかもしれない。(スナップショット参照)

後付けでいいので、適当に、しかもなにやら意味ありげに、つまりそれぞれの岩が実は地中では繋がっているかもしれない。そんなことも考えながら岩を埋める。

・植生はどうするか? いろんな種類のものを植えたいか、シンプルに統一したいかは性格の違いが出るかもしれない。洋式庭園と日本庭園であれだけ違うのだから。ただ、ここでは自然を模すことにしよう。

植物園ではないので、自然のなかではやたらバラエティーがあるわけではない。ここでテクスのことを思い出そう。あまりにテクスの種類が増えると負荷の問題があるかもしれないがそれはさておき、何十種類もの植物が混在することはない。鉛直方向には木々の下に生える草、木陰の低木は明らかに種類が違うので、鉛直方向のバラエティは保持しよう。

でなければ、もともと植物にはテリトリーがあって、あるところには同じ種類のものが集団をなすが、別の植物のテリトリーときっちり線引きされるわけではなく、入り混じった場所があってもおかしくない。

ここである種類の植物オブジェクトを選んで配置することにしよう。これを何十も植えてもテクスは1枚である。代わりに、その植物オブジェクトは一本一本、サイズを変え、方向を変え、傾きを変え、間隔も変えて、何一つ規則的なものがないようにする。こういう方法でバラエティーをいくら増やしても、シムの負荷は増えない。

その際、地面から顔を出している岩との関係を意味ありげにするとよい。当然、岩の上には植物は生えにくいわけだから。そういう空白を存在させることが、植生をより自然らしく見せることになる。

海中では、じつは大部分の海底は砂地だそうだ。リップルマーク入りの砂地テクスを使うと流れの存在が感じられていいかもしれない。そこに意味ありげな配置で頭を出している岩に海藻やサンゴが根付く。砂地からサンゴや海藻が生えることはあまりなさそうだ。陸上とは反対ですね。あとは上と同じ。ちなみに、サンゴ礁と藻場はそれぞれ好みとする水温の違いから、あまり共存はしないかもしれないことに注意。

実のところ、こういう観点で海中の画像や動画を探しても、だいたいサンゴや海藻が密集しているところばかりが映像になっていて、なんにもない砂地だけの映像がアップされていることはない。そういう意味で自然らしいからしくないか議論できるのは仮想3D空間ならではのものと言える。

(つづく)

たかがテクスチャ、されどテクスチャ

博物館製作メモってうたってますが、教育者ではないので、作りたいものを作る、一緒に組める相手が見つかれば、相手にも作りたいものを作ってもらう。そうしていればいつも間にかシム内はオブジェクトで一杯になっていく。

ある時点、訪問者の中にはシムの重さに耐えられない人が出てくることになる。これはバーチャル科学館の使命としては由々しき事態である。

だいたいはテクスの読み込み時間がネックになるのではないだろうか? しかも情報の豊富な博物館ほどテクスで重くなる。

(解像度)

所詮、1920x1080のモニタで見るんだから、512x512以上の解像度のテクスはいらないはず。ズームしても見たい細密画ならともかく。

文字情報を含まないスナップショットは512×256でもいいはず。まずはそうしておいて、どうしても不足なテクスがあればそれだけ1024x1024に上げればよい。

以下のテクスの最初のが256x256.その次が512x512である。ここまで表示できることを知っておくとよい。

(png-24の透明なし)

さて、大変煩わしいテクス作りを効率化するには、私の場合、最初から512x512と512x256の2つテンプレートを用意しておく。保存時にpng-24の透明なしで保存すれば、そのままSL/OpenSimにアップできる。ここでGoogleスライドもパワポも「png-24の透明なし保存」を選択できない。ただ「png」を選ぶしかない。

イラストレータやフォトショップなら「Webおよびデバイス用に保存」を選ぶと「png-24の透明なし保存」を選択できるが、どちらもアイコン状態ではフォルダ内でサムネイル画像が表示されないので、整理に不便。

皆さん、楽なソフトをご存知でしたら教えてください。

(そもそもの話)

ここから仮想空間内での文字情報の扱いについて考える。

そもそも仮想3D空間なので、言語を使わず視覚的コミュニケーションを多用したい。そうすれば言語の違いを超えた博物館になる。ところが、絵画や彫刻でもタイトル、作者名、製作年の表示のないアート作品はない。逆に言えば、ゴミやガラクタでもそれにタイトル、作者名、製作年を表示すればアートになる。

現実世界の美術館を例にすると、ある大部屋でざっと絵画を見渡す。惹かれる絵画を選んで接近してタイトルと作者名を見る。さらに興味が惹かれれば、もっと細かい字の解説を読む。このようにズームイン・ズームアウトを繰り返しながら館内を回る。

これと同じことを仮想空間内でシームレスに行おうとすると、テクスチャ作りばかりに追われて楽しくないし、たちまちテクスヘビーなシムにもなってしまう。ウェブ版のバーチャル博物館・美術館があるけど、それと同じ作業量の仕事を、仮想空間内の仕事に加えて行わないといけない。

それはともかくここではテクスヘビーの問題を考えると、タイトル、作者名、製作年まではフローティングテキストで済ます。英語・日本語併記まで可能。しかも、このフローティングテキストはいったん表示してしまえば、スクリプトを停止しても表示は続く。なんならスクリプトを削除したってよい。

スクリプト・ヘビーはテクス・ヘビーよりも厄介な問題である。テクスチャの方は描画距離を小さくすればよいが、スクリプトの方はシム内のどこにあっても読み込まれてしまう。

それはともかく、フローティングテキストには泣き所がいくつかあって、離れると見えないし、壁に描けた絵にフローティングテキストを表示すると、壁の裏からも見えてしまう。嫌いな人は嫌いで、フローティングテキストを禁止しているシムもあったほどである。

(ちょっと中途半端だけど、つづく)

JOGのアビスにある「ちきゅう」は全長210mの船を最初はSciSimというグリッドの1シム256x256mに収まるように作らないといけなくて、対角線上に置いて作る根性はなかったので、1.2倍で作ってあるが、階段が狭くて往生しますね。

Virtual Abilityでは、実世界のバリアフリー/アクセシビリティの基準をそのままシムのデザインに適用しているそうです。通路の幅、段差、曲がり角など、車椅子を考えた配置にしていて、そのほかいろいろ聞いたんですが忘れてしまいました。

ただ、仮想空間は別の基準として、特に階段はOpenSimだとちょっとの段差も昇りにくいので、しのばーさんのおっしゃるとおり、透明の斜面を被せる方がいいし、室内の家具や扉は、どんどんファントムにしてしまう配慮が必要。

そもそも、扉はない方がいいし、どうしても付けるなら、扉は、開く扉かタッチしなくてもわかるように、入口らしく見えるようにしないとね。フスマなんて大変。

あと、壁に額や展示パネルを飾るときの高さ。これなんか、やはりアバターについてるカメラの位置が悪く、実世界のイメージで額を飾ると、いちいちカメラを上に振り上げないといけない。ところが室内のイメージ的には、天井を高くする一方で額やパネルを床の直情に置いたら変なんですよね。

結局、ビュワーの操作しやすさを考えると、実世界のデザインを仮想空間に持ち込んじゃいけないんだけど、そうもいかず。

少なくとも、実世界の常識を無反省に仮想区間に持ち込んではいけない。悩んだ上でなら仕方がない。