バーチャル博物館製作メモ(その19)


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バーチャル博物館製作メモ(その19)

- Yan Lauria の投稿
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仮想空間を利用した教育

教育関係について少し突っ込んだ話。欧米で仮想空間を利用した教育についてのジャーナルがいくつもあり、今でも論文が投稿されている。それには3つ理由がありそうだ。

一つ目は教育環境の格差が大きい地域の問題。SLを用いることによって、教育機会を得ることが困難な地域の生徒(あるいは長期入院中の子供)と、自宅から授業を行える教師を結び付けようというもの。

二つ目は、直接的な対人関係を持つことが難しい症状の子供に、アバターを通じて社会参加の訓練をさせようというもの。これぞコミュニティを持つSLならではの取組みだが、匿名の高さゆえの不道徳な人間によるリスクも大きい。もともと人間の中にはある割合でモラルの低い人間が出現する。通常は社会的監視下での制裁又は軽蔑を恐れて自制するが、大都市やネット社会のように社会的監視ができないところで悪いことをする。そこでOpenSim GridあるいはUSBスティックの仮想空間を使おうという特殊教育の先生もいた。

三つ目は新しい教育理念の実験の場である。受験勉強のようなマスプロ教育はどうあがいてもこんなに手間がかかり、スキルが必要な仮想空間でできるわけはない。ConstructivismとSTEAMという2つの教育理論で特に注目されている。

(Constructivism)

教育におけるConstructivism(構成主義)とは、「子供たちがある対象について、彼ら自身による(それぞれ違った)理解を組み立てるようなかたちで教育すべきである、あるいは子供たちの中に既に存在している概念を前提に授業を組み立てる必要がある(ウィキペディア)」というもの。そこでは学習者は世界と積極的に関わりを持ち、近くを総動員して思考を深めようとする。また、対人的なコミュニケーションとともに自己内コミュニケーション過程を通して、社会に参加していくことそのものが学習であるとする。

これではまだ仮想空間との関係が見えないかもしれない。これまでの教育法とどこが違うかと言うと、① 能動的に勉強できること、② 勉強に目的と意味があること、③ インターネットなど知識を提供する不道具を使う、④ 学習者が成果物を作り、みんなにプレゼンする、⑤ 他の人々とインタラクションを行う、⑥ 先生は支援役。

これって教室で教科書を開いていただけではぜったいにできない。例えば、15人ぐらいの生徒にパソコンを使ってもらってInternational Spaceflight Museumに放り込んで探検させる。そのうち誰かが国際宇宙ステーションまで行くスペースシャトル・ライドを見つけるかもしれない。それだけで①~⑥の半分は教室に居ながらにして達成できるだろう。しかも宇宙からの視点を身に着けてくれるかもしれない。

ちなみに、JOGのサポートサイトに使われているMoodleは、①~⑥の機能を考えてデザインされているだそうだ。

実は、日本の理科教育には以前からConstructivismが取り入れられており、今の学習指導要領でも学習者の主体的で協働的な学びへの転換を図るアクティブ・ラーニング、ディープ・ラーニングの実現を求めている。ところが「教師は教わってきたようにしか教えられない」とよく言われるそうで、実際には大変らしい。

参考:http://www.shitennoji.ac.jp/ibu/wp/wp-content/uploads/2015/11/kiyo60-15.pdf

(STEAM教育)

一方、STEAM教育というのは、STEM教育、すなわちScience, Technology, Engineering, Mathematicsという理系教育とArt教育を融合させたものだ。Artを人文学に置き換えるとよくわかる。ジュール・ヴェルヌとアポロ計画のように、また小松左京と地震研究・深海潜水調査船開発のように、SFは科学にイマジネーションを与え、科学はSFにインスピレーションを与えてきた。

しかしSTEAM教育の提唱者であるGeorgette Yakmanは違った発想だったかもしれない。STEAM = Science & Technology interpreted through Engineering & the Art, all based in Mathematical elements. と定義していて、人文学を科学技術を理解する道具と位置づけている。Women in Scienceの文脈で語られることも多く、人気のない理系教育をビジュアルにして面白くしようというところから始まったようで、STEMとArtが相互作用していないように思える。

私としてはデザインセンスのあるエンジニアを産業界が求めていることからも、美的センスあるいはイメージのリテラシー(読貝力)を磨くことにもっと力点を置いてもよいと思う。言語や数学とは異なる「イメージの文法」を学んで鍛えれば、科学技術ともっと相互作用できるようになるのではと思う。とはいえ、教育の現場でアートを教えられる先生はなかなかいないだろう。文系の人の感性を理系教育に取り入れて面白くするというのが精一杯なのかもしれない。

で、もう言うまでもないと思うが、豊かで多様なイメージに溢れた仮想空間がこれからのSTEAM教育に活用されてもよさそうだ。

(教員養成プログラム)

ということで、仮想空間がConstructivism教育やSTEAM教育に活用されるように、仮想空間を教育に活用するための教員養成プログラムに取り組んでいたサンフランシスコ大学ほかの研究者と協力した。

まずは、SL内の自然科学~社会科学~人文学の教育リソースとなるシムへのテレポートハブ、Education Portal(一つ目の画像)をScienceCircle Foundationが運営するシムに設置している。またJOGのアビスにもOpenSim GridのHyperGridテレポートハブを置いている。

次に、学校の先生に仮想空間の魅力を知ってもらい、必要なスキルを学んでもらえるチュートリアル施設、Teacher Training Tower(二つ目の画像)を作った。

さらに、これらSLとOpenSimを使った Lesson Plan Database について、これまであったものはとっくの昔にアップデートされなくなっているので、これも新たに自分で作った(三つ目の画像)。

(いよいよ最終回につづく)